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色彩設計 大塚眞純さんインタビュー

原作のきれいな水彩テイストを
アニメの色合いに当てはめていく
原作の魅力は?

ずっとキュンキュンしています。キャラクターに悪い人たちが出てこないですよね。個人的に癒しをもらっているのがふみおです。アニメでもすごく可愛く表情集が作られていて、もらったときに思わず「好きです!」と伝えてしまいました(笑)。
雨隠ギド先生は、水彩テイストのきれいな塗り方が印象的。最初に色彩設計のお話をいただいたときは「このきれいさを崩しちゃいけないな、どうやってアニメの色合いに落とし込めるだろうか」と心配になる部分はありました。アニメの色合いというのは基本的には「このパーツはこの色、影はこの色」と決めていくもので、水彩らしい中間色や変化していく色合いを表現するのはなかなか難しいんですね。でも原作の色を見ながら入れていったら、違和感なくきれいに仕上がったのではないかなと思っています。

色彩設計の仕事とは?

一般的には、アニメの絵の中で「動く部分」の色を決める人です。キャラクターや、服、小物のほか、周りで走る車などの色を設定することもあります。着ている服が変わればそれも全部設定しますし、加えて場面の時間設定が変わるので、昼間・夕景・夜でそれぞれのキャラの色のバリエーションも設定していきます。「おとなりに銀河」の設定数は少ない方ですが、それでも1キャラあたり数十パターンは作成していますね。
アニメは、アニメーターによって描かれた画に、「仕上げ」というセクションによって色が塗られて完成していきます。このセクションの中でのキャリアで言うと、仕上げ、塗る色を指示する「色指定検査」、その次に「色彩設計」という段階になっているでしょうか。
私がアニメ業界を目指した最初のきっかけは絵を描くのが好きだったからなんですが、業界に入る際に「仕上げって、色が塗られた完成形を見ることができていいな」という気持ちになったんです。アニメーターさんが描いた良い絵に色を付けると、自分で絵を完成させたような感覚になって、ちょっと得した気分になるんですよ(笑)。本作でも、色を無限に作っているような感じですが、「大変だ……」というよりも、楽しいという気持ちが強いです!

本作のこだわりポイントは?

しおりにはいろいろなこだわりポイントがあります。彼女の瞳は、他のキャラクターと描き方が違っているので、色の表現を工夫しました。それから髪の色ですね。ギド先生のカラーをよく見ると、しおりの髪の色の中に金や茶系ではない差し色が入っていて、それによってちょっと不思議な感じが出ているんですよ。色彩設計の際にはその色使いを参考にして、グラデーションを入れる相談をしました。
あと注目してほしいのは……「黒」ですね! しおりはずっと黒い服を着ていますし、久我家のみんなも髪色や服の色が黒っぽいんです。これまでリアル寄りの作品をそこまで担当してきていないので、「こんなに黒を使っていいんだ」というのは新鮮でしたし、そうした黒の中でバリエーションをつけて、「これ以上黒のレパートリー出ないよ!」と思いながら(笑)作業するのも楽しいです。服や髪の数だけ黒の色を用意しています。

制作中印象に残っていることを教えてください。

ギド先生と直接打ち合わせをするようなことはないのですが、たとえばアパートの住人たちなど、原作で色設定がないものについて編集さんを通じてご意見をお伺いする機会がいくつかありました。そういった質問に対するお返事の中で、ギド先生は時々スタッフへの励ましや暖かいメッセージを書いてくれることがありまして。「すごくいい方だ…!」とうれしい気持ちでいっぱいになりました。
それから、今回アニメーション制作を担当している旭プロダクションは、もともと「撮影」セクションで有名な会社さんなんです。色彩設計からすると、撮影によって視聴者の方からの印象は大きく変わるので、旭さんに撮影を担当してもらえるのが楽しみでした。今回、主線の色を薄くしているのですが、撮影の力によっていい感じにしてもらえていて、とてもうれしいです。

楽しみにしてほしいシーンは?

1話に出てくる宇宙のシーンですね。物語全体では日常シーンが多いのですが、銀河のシーンで異空間っぽさを楽しんでもらいたいです。それから、みんなよく顔が赤くなるので、「かわいいな」と思って見てもらえればと。ラブコメなので、頬だけ赤くなったり、顔全体で赤面したりします。その赤面ぶりをニヤニヤして見ていただきたいです(笑)。

メッセージをお願いします!

本作には、言葉にうまく表せないふわふわな空気感があると思っています。ぜひそんな世界に浸ってもらいたいです。原作ファンの方には、楽しく制作をしているのでその気持ちが伝わるとうれしいですね。アニメから入った方には原作もぜひ全部読んでいただきたいです!